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第3号2009年6月【特集】資本主義に愛はあるのか?あなたのエロスは偽ネタ物じゃない!
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ロスジェネ4号巻頭言

 今回のロスジェネは、小説、批評、絵、対談の4つだけです。それで終わりです。

 創刊時とは状況が変わり、無数の「格差本」が世に溢れ、昨年夏には自由化を推し進めた前政権も退陣し、貧困と格差をめぐる議論のアリーナは広がりました。しかし、これだけ運動が広がり、新政権が樹立されたにもかかわらず、派遣法その他の制度は抜本改正されない。現実の動かなさの前で運動も議論も疲弊しつつある。
  そんな状況下で、親身な顧客に期待を裏切らない商品を送り続けるよりも、もう一度立ち上がるために、我々は、この虚しく飽和した言論状況を、自らの実行=作品によって終わらせることを選びました。

 この本の半分以上は批評家の杉田俊介と大澤の対話で占められています。
  我々は、二〇〇〇年代初頭に、近代批評の到達点と信じられた、ある社会運動体の無残な崩壊の余波のなかで出会いました。その後、そこで示された問いを引き継いで、「フリーターズフリー」や「ロスジェネ」といった、心無い人たちから「ニート論壇」だの「格差論壇」だのと揶揄罵倒された言論の一角を創出してきました。

 我々の活動は多くのメディアで取り上げられました。十年前には予想もしなかった多くの仲間たちと出会い、互いに言葉を交わし合うなかで、「何かが変わりつつあるのかもしれない」そんな錯覚が芽生えつつあったさなか、あの悲惨な事件が起こりました。
  事件を境に議論はさらに過熱しましたが、正直、我々の心は冷え切っていった。何かを根本的に考え直さねばならない。「届かなかった」とか「救えなかった」ではない。

 我々の言葉は彼がネットに書き込んだ殺意に匹敵していたか。

 次から次へと現れる贋物の「論客」にも、閉塞していく運動の内部にも違和を覚えながら、僕らはただひたすら疲れていた。その疲れをいまも引きずったまま、最後に、どうしてもやりたいことがある。それは「政治と文学」という対立図式を破壊する、たんに「力のある言葉」を、自らの「文学」の徹底においてつかむことでした。それは我々の現実それ自体の自己検証=自己批評なしに為し得ないと思った。

 つまり、現場から見た、この十年の思想と運動の総括と考えてください。

 文学・思想・政治に興味のある人は「Ⅰ」を、現在の思考の最前線がどこにあるのか知りたい人は「Ⅱ」を、近年の労働運動や若者メディアが気になる人は「Ⅲ」を、対話という行為がどこまで行くのか見たい人は「Ⅳ」を、とりあえず開いてみてください。

 読めばわかりますが、理論的な話もあれば、ゴシップや悪口もあるし、自分たちをマンガのキャラクターに重ねてみたり、酒が入っての人生論もあります。いまはもう会えない人のことを話したり、かと思えば相互批評が始まったり。
  でも仲良し同士のお喋りではありません。対話中でも触れているように、杉田は僕の批評によって一年半の失語に陥り、僕もまた、かつて批評されたことの痛みを新たな恐怖とともに思い出しています。

 とはいえ文学とはこういうものではなかったのか。
  俗なことも、真剣なことも、理論的なことも、率直な批判も、やりたいようにやればいい自由さこそが、文学の最大の力じゃなかったのか。そんな突風を「時代閉塞の現状」(石川啄木)に送り込みたかった。べつに特別なことではない。話す、疑う、批判する、信じる。誰でもできることだ。それを徹底的にやることだけが現実を変えていく。いまの僕にはこれ以上の本気は出せない。

 もとより恩人友人を含めすべての関係を失う覚悟です。その覚悟だけが彼の絶望に迫る唯一の道であり、それを言葉で行なうことが、彼への最大の批評だと信じます。

 最後なので「普通じゃない」(浅尾大輔)に徹しようと決めました。
  写真家の納見直さんに撮り下ろしてもらった数十枚の写真から一枚を選んで、表紙に、デザイナーの戸塚泰雄さんの斬新なアイデアを全面に生かして、このようなブックデザインになりました。この造本でこの価格とはどういうことか。出版関係者でなくても何か感じてくれると信じます。それは、本というメディアに対する僕たちの思い入れのかたちであり、批評です。
  同じ意味で、創刊号に寄せた小説「左翼のどこが間違っているのか?」を、増山麗奈の挿画とともに「ロスジェネ」のホームページ上に無料で放出しました(注記──後ほどこのホームページ上に掲載します。しばらくお待ちください)。切るなり貼るなり好きにしてください。これもkindleやipadなどの電子出版に伴い、紙出版の終わりが囁かれる現状に対する批評であり、同時に、ネット上で書かれている言葉たちに対する批評でもあります。

 編集委員の作品については自分の目で確かめてください。ただ一つだけ。誌面に反映された以上の「批評」が編集委員の間で交わされたと想像してくれると嬉しい。なお増山麗奈の作品は出来れば個展で実物を見るようお願い申し上げます(詳細はHP)。

 二年間という短い間でしたが、この間、多くの方々に支えられてきました。何よりもまず、読者のみなさんに。それから、御寄稿・御登壇頂いた各氏と、問いを共有してくれた仲間たちに。さらに、書店をはじめ出版関係者諸氏、メディア関係者各位に。そして、我々を罵倒しつつもじつは、大して違わない精神の貧困に苦しむ「敵」たちに。この時代を共有できることの心からの感謝を捧げます。ありがとうございました。

4号責任編集 大澤信亮